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近年、石油化学系の環境蓄積材料からバイオマス由来の環境循環型材料への転換の必要性が増しており、微生物から新規な天然高分子を抽出しこれに基づく機能性材料又はその製剤を創製して有効利用することが望まれています。 このような中、2006年 北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科 金子研究室の研究者らは、日本固有の食用藍藻であり、淡水性の光合成微生物スイゼンジノリ(水前寺海苔、学名:Aphanothece sacrum)が極めて大量の寒天状物質を細胞外マトリックスに分泌することに注目し、スイゼンジノリからこの寒天状物質を抽出することに成功しました |
![]() スイゼンジノリの外観と光学顕微鏡写真 |
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抽出物を分析した結果、この物質は多くの硫酸基とカルボン酸基、アミノ基を有する両性電解質の多糖類であることがわかりました。またその平均分子量は、天然由来材料としては史上最大の1600万にも達し、分子鎖長が10μmを超える超巨大分子であることが確認されました。 さらに、構成単糖にこれまで存在が報告されていない硫酸化ムラミン酸を含むことから、新規物質であることが判明し、スイゼンジノリの学名から”サクラン(Sacran)”と命名されました。 |
![]() FT-ICR-MSによって確認されたサクランの糖残基配列の一部 (ウロン酸とムラミン酸を含む配列) |
![]() 抽出されたサクラン(粉砕後) |
サクランの物性については大学等で研究が進行中であり、以下のような性質があることが分かってきております。 ・ヒアルロン酸Naの10倍にも及ぶ高い保水力(生理食塩水比、純水では6倍) ・高粘性、チキソトロピー性を示す ・被膜形成力(バリア機能) ・低濃度で液晶性を示す この他にも、サクランの生体に及ぼす好影響について研究が進められております。 |
改良型ティーパック法による吸水実験の結果、他の多糖類と比べてはるかに高い吸水力があることが確認されました。また0.9%のNaCl水溶液で同様の実験を行い、塩を添加しても高い吸水力が維持されることが確認されました。 |
![]() ![]() 純水の保水力 塩水の保水力 |
◆不凍水率測定サクランの1%生理食塩水溶液(0.9%NaCl)を示差走査熱量計(DSC)により測定した結果、他の多糖類に比べ、サクランは多くの水を不凍水として保持することが確認できました。乾燥環境下でも、より多くの水分を安定して保持できます。 |
![]() DSCによる不凍水率の測定結果 |
サクランの1%水溶液のせん断粘度を測定し、サクランが極めて高い静的粘性を示すことと、せん断速度依存性を示すことが確認されました。これらの特徴的な粘度特性のために、サクランは他の多糖類とは異なる素材感を与えます。 また、サクラン1%水溶液に0.9%のNaClを加え同様にせん断粘度を測定し、他の多糖類と比較した結果、サクランの粘性は塩の存在により影響されにくいことが確認されました。 |
![]() せん断粘度測定結果 |
サクランの50ppm水溶液を乾燥させたものをAFMで観察することで、巨大分子が複雑に絡み合い、網目構造を持つ膜が形成されることが確認されました。 またサクランは、水溶液中に塩が存在しても分子鎖が凝集せずに等質な棒状構造を保つため、ナノレベルで均一な膜を安定して形成可能であることもAFM画像で確認されています。 適正量のサクランを水溶液に配合することで、幾重にも重なった保護膜が形成され、ナノレベルで表面を平滑にコーティングします。 |
![]() 50ppm水溶液をマイカ上にキャストしたAFM画像 |
スイゼンジノリは、九州の阿蘇山系の伏流水のみで育ち、食することのできる非常に珍しい藍藻です。江戸時代には、細川藩や秋月藩が幕府へ献上しており、藩の財政を支えていたと言われております。 オランダの学者であるスリンガー氏により、その生育環境の素晴らしさから「聖なる」という意味をもつ「Sacrum」という学名をつけられました。 サクランは、この素晴らしい水環境で育つスイゼンジノリが自らの細胞を守るために分泌すると考えられています。 現在、大量養殖は福岡県朝倉市の黄金川でのみ行われており、黄金川周辺の水環境の悪化に伴い、その収穫量が減っております。弊社では、この貴重で素晴らしい生育環境を守る活動を行うとともに、スイゼンジノリの養殖・培養について養殖業者様と共に取り組んでおります。 |
![]() 黄金川で育つスイゼンジノリの様子 |
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