サクラン®とは

サクラン®とは

サクラン®は、スイゼンジノリから抽出される多糖類です。「多糖類」とは、グルコース等の単糖がいくつも連なった物質の総称で、化粧品の保湿剤として欠かせないヒアルロン酸や、健康食品に用いられるコンドロイチン硫酸などが多糖類に分類されます。

多糖類は一般的に高い親水性を持つという特徴があるため、水を保水する力によって保水性を向上させる効果があります。中でもサクラン®はヒアルロン酸と比較して約5倍もの保水力があることが分かっています。

2006年、北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科金子研究室の研究者らが、日本固有の食用藍藻類であり、淡水生の光合成微生物であるスイゼンジノリ(水前寺海苔、学名:Aphanothece sacrum)が極めて大量の寒天状物質を細胞外マトリックスに分泌することに注目し、スイゼンジノリからこの寒天状物質、サクラン®を抽出することに成功しました。

高保湿力

サクラン®の大きな特徴の一つは、その驚異の保水力にあります。化粧品の保湿剤として一般的なヒアルロン酸と比較すると、純水では約5倍、塩水では約10倍の保水性を示します。

純水保水力が約6倍、塩水保水力が約10倍のグラフ

高粘性・チキソトロピー性

サクラン®は1%濃度でキサンタンガムの4倍、ヒアルロン酸の80倍の粘性を示します。また、触れた瞬間に劇的に粘度が上昇する、逆チキソトロピーという珍しい性質を有しています。この性質は、化粧品等に配合された際に、独特の「つけ感」をもたらします。つまり、肌に乗せた瞬間にしっかりとしたつけ心地を感じることができます。

サクラン®の入った液がビーカーから溢れそうな様子

抗炎症効果

大学で行われたアトピー性皮膚炎患者へのサクラン®水溶液の塗布実験で、サクラン®の持つ皮膚形成能により外部刺激等から保護された炎症部位が、ステロイド塗布よりも症状が緩和されるという結果が得られています。
(参考画像:高知大学医学部 Ngatu医学博士取得データ)

被験者の皮膚の症状が緩和される経過を表す写真

皮膚形成能

サクラン®は非常に高分子(分子サイズはマイクロサイズ)であるため、ナノレベルの厚さの非常に緻密な膜を形成します。サクラン集合体が肌の上で網目バリアを作ることで、皮膚内部から蒸散される水分を吸収し、薄い水の皮膜層を形成することで、皮膚細胞を外部刺激やアレルゲンから守ることが出来ると考えられています。この作用をサクランの第二の皮膜形成能と呼んでいます。さらには、サクラン®の保湿力も加わることで、皮膚内に水分をいきわたらせ、肌の活性化を促進することができます。

皮膚の断面図、サクラン®の潤いのベールがアレルゲンや刺激を弾く様子

サクラン®ストーリー

サクラン®は2007年に岡島麻衣子氏により発見されました。

サクラン®発見者 岡島麻衣子氏からのメッセージ

サステナブルな社会を実現するために、生物由来の環境に優しい生分解性プラスチックの研究をするなかで、日本の豊かな美しい自然が凝集されているような美しい黄金川とそこに成育するスイゼンジノリに出会いました。

「この美しい風景とスイゼンジノリを絶対に残していきたい」という強い想いのもと、スイゼンジノリが世の中の役に立つことはないかと思案し、スイゼンジノリが生み出す物質から生分解性プラスチックを作ることは出来ないかと研究に取り組みました。実験を繰り返す中で、偶然にも水をたっぷり含みプルプルのゲルになった不思議な物質に巡り合いました。それが、「サクラン®」だったのです。

サクラン®に巡り合った瞬間、これは全く新しく、そして無限の可能性を秘めた原料であると確信し、サクラン®を世の中に広めることでスイゼンジノリを守って行こうと強く決意しました。

そこから、サクラン®の物性や機能などを探求する研究がスタートし、スイゼンジノリ・サクラン®の事業コンセプトに賛同して頂いた研究者の協力を経て現在に至っています。 サクラン®が発見されてから20年近く経ちますが、今でもサクラン®の新しい機能が続々と発見されています。

また、一方で、サクラン®を世に出すためには会社を立ち上げビジネス化し、そこで得た利益を黄金川、スイゼンジノリの保全に還元出来ればと考え、大学発ベンチャー企業であるグリーンサイエンス・マテリアル社を立ち上げました。さらには、2023年に、DICがその熱い想いに共感し、グループの一員として迎え入れ支援することを決定しました。

サクラン®は、現在、化粧品原料として皆様の美と健康に貢献していますが、もっともっと皆様の生活の中で役立つ材料として飛躍していくと確信しています。

サクラン®発見者・開発者 岡島 麻衣子

岡島麻衣子氏プロフィール

中国江南大学 化学与材料工程学院 助理教授
専門:バイオベースポリマー、高性能高分子、ハイドロゲル、天然高分子、藍藻由来多糖類、液晶材料

2006年6月 スイゼンジノリから全く新しい多糖類を発見しサクラン®と命名
2006年9月 国際純正・応用科学連合(IUPAC)主催Green Sustainable Chemistry国際会議(ドレスデン)にてサクラン®を発表し、Poster prize受賞
2006年10月 積水化学「自然に学ぶものつくり」研究助成プログラム奨励賞受賞
2007年6月 社団法人繊維学会年会にて優秀発表賞受章
2012年 「第4回ものつくり日本大賞」九州経済産業局局長賞受賞
2023年10月 ICPAC Bali シンポジウムAward受賞

化粧品原料や他用途の原料として

化粧品用途では、屋外養殖場スイゼンジノリ由来のサクラン®と屋内培養スイゼンジノリ由来のサクラネクス®の製品を販売しております。

サクラン®

屋外の養殖場設備で生産されたスイゼンジノリから作ったサクラン®

伝統文化の継承・発信

「生育環境保全、希少性等」(こだわり製品への感性価値の付加)

製品名 サクラン®F サクラン®B
原料
(wt%)
スイゼンジノリ多糖体 0.5 0.5
98.7 69.5
フェノキシエタノール 0.8 -
1,3-ブチレングリコール - 30
荷姿 ポリエチレンボトル(1KG)
保管条件 常温暗所に保管
品質保証期限 製造日から3年

サクラネクス®

屋内の人工培養設備で生産されたスイゼンジノリから作ったサクラン®

種の保存と大量生産の両立

「安定した品質と量の確保」

製品名 サクラネクス®F サクラネクス®B
原料
(wt%)
スイゼンジノリ多糖体 0.5 0.5
98.7 69.5
フェノキシエタノール 0.8 -
1,3-ブチレングリコール - 30
荷姿 ポリエチレンボトル(1KG)
保管条件 常温暗所に保管
品質保証期限 製造日から3年

現在、サクラン®は主に化粧品原料として利用されていますが、これまでにご紹介した特徴を生かし、医療、食品、工業用途など、様々な分野への応用が期待できます。

サクラン®
NCI名:Aphanothece Sacrum Polysaccharide
全成分表示名:スイゼンジノリ多糖体

サクラン®を使用した商品および使用量の例

化粧水やフェイスマスクの湿潤液用途として

重量濃度0.02%~0.05%配合推奨

美容液、美容ジェル、オールインワンジェルとして

重量濃度0.1~0.2%配合推奨

バリア機能補助剤として

敏感肌用想定のバリア機能を発揮させる場合には0.2%推奨

  • サクラン®はグリーンサイエンス・マテリアル株式会社の登録商標です。
  • サクラネクス®はDIC株式会社の登録商標です。

参考資料のダウンロードはこちらから

お問い合わせはこちら